『フェルミ推定はできますか?』
こう問われたとき、あなたはどのように答えるでしょうか?
全くその言葉を聞いたことがない方もいれば、ガクガク・ブルブル震えだす方もいるのではないでしょうか?
私は今、一企業の人事・採用担当として4年ほど学生の方と接したり、高校・大学で講話をしたり、プライベートでは学生時代に熱中していた陸協競技の社会人チームで活動したり、少年自然の家でボランティア活動などをしています。
そんな私もガクブルだった人の1人です(笑)。
最近の就職活動では外資系企業の選考ではよくあった「フェルミ推定」も、一般的な業界での選考でも用いられることが増えてきました。
そして聞きなれない単語だった「フェルミ推定」を耳する機会も増えたことで、不安に思う方も多いのではないかと思います。
フェルミ推定は訓練すればするほどスラスラ解けるようになる一方で、未経験者にはまるでやり方が思いつかない特殊な課題です。
さらにコンサルティング業界で多く課される「ケース面接」にはフェルミ推定の利用を求められるため、対策ができなければあっさりと見送られることになってしまいます。
今回は「フェルミ推定って何?」という方でも解きやすい簡単な例題から応用思考まで、フェルミ推定のノウハウをご紹介します。
「フェルミ推定」は「わからないもの」を概算する力
「フェルミ推定」とは、実際に調査し求めることが難しい数や一見予想もつかないような数字を、 論理的思考能力と最低限の知識で概算することです。
有名な問題には、下記のようなものがあります。
<フェルミ推定の出題例> 「日本にある郵便ポストの数はどれくらいでしょうか?」 「日本にあるマンホールの数はどれくらいでしょうか?」 「世界中で今、スマホを見ている人は何人いるでしょうか?」 「世界中で仏教を信仰している人は何人いるでしょうか?」
私自身、初めて試験用紙でフェルミ推定と出会った(遭遇)したときの感想は「…? 知らんがな!」でした。
しかし、何故このフェルミ推定が選考要素に取り入れられているのかというと、社会人生活を送るうえでは極めて実践的な技術であり、意外と仕事の現場で役立つからなんですよね。
例えば新しい経営企画や戦略を立てるときに必要な全てのデータが揃っていることはほぼありません。経営にかかわる戦略なのに国政の統計データしか頼りになる情報がないかもしれません。
「…? 知らんがな!」と思っても心の中に留めながら、情報が少ない中でも実際に商品をモノにするためには「わけのわからない数字も論理的思考力だけで推定する力」が求められているんです。
【初級編】最低限の材料データと算出方法
フェルミ推定の材料になるもの
まず、フェルミ推定は「ざっくりしたデータから概算すること」であるため、概算する前には「最低限の知識」がないと概算することができずにどうすることもできません。
厳しいようですが基礎的な知識をざっくりとした知識として把握しておく必要があります。
今回は日本の人についてのデータが頭にある前提として、初級編の問題を解いていきましょう!
【基礎知識】 ・人口:1.2億人 ・世帯:5,000万世帯 ・国土面積:約40万平方km ・平均寿命:80歳 ・労働力人口:約6,000万人 ・1年に産まれる子供の数:約100万人 ・大学進学率:約50% ・大企業の数:1.2万社 ・中企業の数:420万社
材料でデータから導く算出方法
フェルミ推定を解くうえで一番のやってはいけないことは、難しい問題にいきなり挑戦することです。いきなり挑戦してしまうと、頭に入っていないデータがない状態や傾向をつかんで段階を踏めば解ける問題も解けなくなってしまいます。
今回は簡単なフェルミ推定の問題を解いてみることで、概算方法の傾向を掴んでいきましょう!
① 全国に女性の人数は何人くらいでしょうか?
【概算】 ・人口は1.2億人として、男性と女性が約半数とするなら… 1.2億人 × 50%(半数) = 6,000万人
② 小学校から大学まで通っている人数は何人くらいでしょうか?
【概算】 ・小学校から高校は進学率100%とするなら… 100万人 × 12学年 = 1,200万人 ・大学の進学率は約半数とするなら… 100万人 × 50%(進学率) × 4学年 = 200万人 1,200万人 + 200万人 = 1,400万人
※今回の概算は簡単に推定するために、専門学校・高専・短大・大学院をあえて数えません。フェルミ推定ではある程度細かい数字を無視することがポイントです。
③ 日本にある電柱の数はどれくらいでしょうか?
【概算】 ・道端の電柱を想像すると「都会」と「田舎」で違いそうそう… 日本の面積のうち、都市を10%、田舎を90%として、 人口密集度を考慮して、都会は50mx50mで1本、田舎は150mx150mで1本とすると… まず、日本の国土面積は約400,000㎢なので 都会:400,000㎢ × 10%(国土の10%) = 40,000㎢ 田舎:400,000㎢ × 90%(国土の90%) = 360,000㎢ ・「都会」と「田舎」の各面積あたりの電柱の数を掛け合わせると… 都会:40,000 × 1,000 × 1,000 ÷ 2,500 = 16,000,000本 田舎:360,000 × 1,000 × 1,000 ÷ 22,500 = 16,000,000本 ・「都会」と「田舎」の電柱の数を合計すると… 16,000,000本 + 16,000,000本 = 32,000,000本
※ ちなみに実際の値はNTTデータ(2011年)で33,211,965本であり、近似値を出しています。
【応用思考】論理性を磨く
フェルミ推定は「ざっくりしたデータから概算すること」であるとお伝えしましたが、ざっくりとしていても、何故その結論に至ったのかを論理的に説明する力が必要になります。
ここでの論理性とは「問題を論理的に検討する思考力がある」かどうかということです。そして論理的に考えるには以下の2点に細分化して具体的にしていくということです。
① 論理に飛躍がなく一貫性がある ② 数字を使って意見をサポートできる ③ 問題解決の視点が鋭い(論理的かつ他者との差別化)
① 論理に飛躍がなく一貫性がある
一貫性を持たせるためには施策を考えたプロセスを明示するとともに、その理由をはっきり示せるようにしましょう。
例えば「ある製品の売上増加の方法」を問われたとしたときに、製品の売上を考えるならば「売上増加へのインパクトの大きさ」が施策を選ぶ根拠となります。
そして売上に影響する要素としては以下のようなことがあげられます。
・商品の性能(消費者の購入につながりやすい性能は? 性能を気に入っている客数は?) ・広告(テレビなどのマス広告とネット広告に分ける) ・販売場所(押さえている売り場は?) ・価格(単価は競合他社と比較して優位なのか?)
まず前提として現状分析を通じ上記の情報を確認・整理して、変化を加えると最も大きな成果が得られるキーポイントを探し、効果的な改善策を述べましょう。
単なる思い付きではなく、考えのプロセスを示すことが「論理の一貫性」として評価されます。
② 数字を使って意見をサポートできる
次に論理的に説明するためには「判断の理由を数字で裏付ける」という意識を常に持っておくことです。
先ほどの例では「売上へのインパクトの大きさ」を概算し、具体的な金額で示す必要があります。つまり、「販売価格を1割引にすると◯%購買率が上がると仮定し、◯億円の売上増が見込まれる」と説明する必要があります。
当たり前に感じるかもしれませんが、緊張する面接の場で丁寧かつ適切に流れを説明するのはとても難しいことです。提案の根拠を明らかにして、数字やデータで裏付けできるように練習して慣れておきましょう。
③ 問題解決の視点が鋭い(論理的かつ他者との差別化)
選考要素で用いられるフェルミ推定では、人と異なる視点をアピールすることも高評価につながっていきます。例えば「日本に何台の自動車があるか」というテーマがあったとします。
多くの人が思いつく概算視点は「面積あたりの自動車の台数を考える」方法です。この場合、以下のような条件をもとに解を求めていきます。
・田舎と都会では人口や自動車の平均所有台数が異なる ・車種の区別やバスなどの交通機関をカウントするかどうか ・自動車所有には所得が関連する
これに対して別の視点でアプローチしてみるならば「日本で消費されるガソリンの量」から算出する方法でしょうか。
この視点だと「自動車の数」は「年間に消費されるガソリンの総量 ÷ 車1台が1年あたりに消費するガソリンの量」で導き出すことができます。そうすると先ほどの面積あたりで考えるトラックや自動車の区別・所得などの条件を考えずに回答を求めることができます。
また別の視点では「需要=供給」の関係が成り立つと仮定して「自動車の台数 = 年間生産数 × 自動車の耐久消費年数」と概算する方法もあります。
フェルミ推定の対策では「フレームワークを身に付けるべきだ」という意見も多く聞かれますが、単に多くのフレームワークを暗記するのではなく「考え方のパターン」を増やしていくことが大切です。
考え方のパターンとして、1つの問題に対して考え方は無数にあるということです。ある程度の問題をこなすと、異なる問題に対しても考え方のパターンを当てはめてみることで、自分で応用して答えを探せるようになってきます。
以上のようにより個性的なアイデアを思いつけば、効果的なアピールになるでしょう。面接の前に自分なりの解法を準備しておくことを強くオススメします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
フェルミ推定と聞くと不安になってしまう方も、多少の恐れを無くすことができたのでなないでしょうか。初級編では簡単に3つの問題を解いてみましたが「意外と納得」できた方が多いのではないかと思います。
しかし、実際のフェルミ推定の実例の難易度はかなり高いです。それでも不安がることはないと思います。こういった課題も、あらかじめたたき込んだ基礎知識をもとに推定すれば怖くありません。
意外とフェルミ推定で苦戦しやすいのは綿密に計算したい理系の学生と言われています。「思い切って◯◯とする」と仮定できないと、いつまでも前提の数字にとらわれて制限時間内に答えを導くことはできません。曖昧な情報データで正しい答えへ近づくのは至難の業であり、そもそも目的ではないということです。
また、フェルミ推定は正しい回答は求められていません。答えが天文学的にズレていたら問題かもしれませんが、それっぽい数字であればあとは論理的思考力とそれを説明できるプレゼンテーション能力があれば乗り切ることができるんです!フェルミ推定にビビらずいきましょう!
それでは今回はここまでです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
コメント